当科の役割

優れた治療実績が物語る最先端治療の取り組み

当科では特に網膜硝子体疾患をはじめ幅広い専門外来を設置し最先端で良質な治療を積極的に行っており、高い治療成績を誇っています。

専門外来のご紹介

網膜/遺伝

名古屋大学眼科学教室は1907年に小口病を発見した第5代 小口忠太教授、1986年に先天性停止性夜盲の新しい分類である完全型、不全型を、1989年に三宅病ともよばれるoccult macular dystrophyを発見した第10代 三宅養三教授をはじめ遺伝性網膜疾患の領域で確かな足跡を残してきました。
このような歴史のある名古屋大学眼科の網膜/遺伝外来では現在、網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、オカルト黄斑ジストロフィ(三宅病)、錐体ジストロフィ、停在性夜盲などの遺伝性疾患を中心に、西口康二教授外来(月曜)、小南太郎(月曜、金曜)、小柳俊人(木曜)で診療を行っております。
光干渉断層計、眼底自発蛍光撮影、網膜電図(全視野、多局所、局所)、マイクロペリメトリ、時に補償光学眼底カメラなどの機器を用いて最先端の診断・病態評価が行えるように励んでおります。時間をかけて患者さんに現状や予後、最新の研究などについて説明し、視覚代行リハビリや社会サービスの案内をするとともにロービジョン外来ともよく連携し患者さんのQOL向上を目指しています。
これまでに名古屋大学眼科同門の先生方をはじめ多くの先生方から網膜色素変性患者さんをご紹介いただき、網羅的な遺伝子解析を行っております(今後は重要な遺伝子変異の有無について解析を行います)。

網膜/黄斑

黄斑外来では加齢黄斑変性、中心性漿液性網脈絡膜症をはじめ、強度近視に伴う脈絡膜新生血管、網膜色素線条、特発性脈絡膜新生血管など幅広い黄斑疾患を対象として診療を行っています。
大学病院ならではの最新検査機器による多角的な精査、カンファレンスによる症例検討・情報共有により正確に診断できるよう努めています。また治療面ではここ数年新薬の発売が続いている抗VEGF療法、pachychoroid diseaseに対する効果が見直されている光線力学療法など変化の目まぐるしい黄斑診療において常に最新の知見を取り入れ最適な治療をご提案させて頂くことを心がけています。抗VEGF薬硝子体注射は年間6000件を超えており、全国でも有数の豊富な治療実績を誇っています。
長期にわたるマネージメントが必要となる黄斑疾患の治療を継続するため、患者さんと現在の病状や今後の治療方針をしっかりと共有し、患者さん自身が積極的に治療に取り組んでいただけるよう努めています。

網膜/血管

網膜/血管外来では網膜血管の異常を主な原因として発症する疾患、主に糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症などの診断・治療を担当しています。これらの疾患に対し、分子標的薬である抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬・徐放性ステロイド薬・網膜光凝固(レーザー治療)・外科的手術を基本としてエビデンスをもとに治療方針を決定しています。未治療の症例だけでなく、既に抗VEGF薬などによる治療をされている患者さんに対しても治療方針決定や追加の病状説明などを担当しています。また近年開発が活発な抗VEGF新薬に対する企業主導治験にも積極的に参加しています。さらに最新の治療実践と並行して、さまざまな臨床研究を行ない、疾患自体の病態理解や治療薬の動態について分析を行なっています。具体的には、患者さんの血清や前房水、手術症例では硝子体液を用い(院内生命倫理審査委員会承認)、単に臨床成績から治療方針を決定するだけでなく、患者さん一人一人の疾患背景や病態を理解した治療方針決定に努めています。

ぶどう膜炎

ぶどう膜炎は、虹彩、毛様体、脈絡膜という「ぶどう膜」と呼ばれる部位に、炎症が起こる疾患です。サルコイドーシスや原田病、ベーチェット病など全身疾患が原因のことが多く、専門的な機器による検査などが必要な場合があります。大学病院の強みを生かして他科と連携を図りながら患者さんのお役に立てるような外来を目指しています。
月曜日、木曜日の初診外来にぶどう膜炎初診外来を併設しました。急ぎの場合の他の曜日では、初診担当医が診察後に必要に応じてぶどう膜炎外来(再診)の予約をお取りします。

緑内障

現代の緑内障治療は多様化し、高い専門性が求められています。緑内障グループでは種々の治療法を用いて新生児から超高齢者まで、眼圧が10mmHg程度の正常眼圧緑内障患者様から難治緑内障の患者様まで、患者様の状態に合わせた最善の治療ならびに術式を選択できるように努めています。
当院における緑内障に対する手術加療として、トラベクレクトミー、緑内障インプラント挿入術(アーメド、バルベルト、エクスプレス)、トラベクロトミーなどの多様な手術が施行可能です。今後も最新の知見をもとに、緑内障診療をより充実したものとしてまいります。
当専門外来では基本的に当院のみでの経過観察は行なっておりません。手術が必要ないと判断された患者様、術後安定した患者様は近隣の眼科クリニック、眼科病院への通院をお願いするかと思いますがよろしくお願い申し上げます。

角膜

当院ではドライアイや円錐角膜、角膜ジストロフィ、感染性角膜炎など様々な角結膜疾患を専門的に診療しております。前眼部感染症では通常の細菌培養や擦過検鏡に加えPCR法を用いた病原体検索も行なっております。また、腫瘍、輪部疲弊症、水疱性角膜症などの重症疾患で全層角膜膜移植、層状角膜移植、角膜内皮移植、角膜上皮移植、羊膜移植などが治療適応となる場合にも対応しており、国立長寿医療研究センターと連携しながら治療しております。
角膜疾患で緊急を要する場合は角膜外来の日でなくとも、初診担当医が診察し初期対応をさせていただき、必要に応じて角膜外来に紹介となります。
角膜疾患でお困りの症例がありましたら是非当院の角膜外来にご紹介いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

小児眼科

当院の小児眼科部門では、視機能の発達途上にある小児が自身の視機能を最大限に発揮できることを目標として、長い将来を見据えた治療を行います。
特に未熟児網膜症に対する抗VEGF療法・網膜光凝固術・網膜復位術から硝子体手術までの手術療法は、数少ない専門施設として重要な役割を担っています。また、小児白内障や緑内障に対する手術療法とその後の視能訓練、稀少な小児網膜疾患(家族性滲出性硝子体網膜症や胎児血管遺残、コーツ病、色素失調症など)に対する全身麻酔下蛍光眼底造影と網膜光凝固術, 手術治療にも対応しております。周術期の視能訓練の重要性をご家族にも認識していただけるよう努め、コンタクトレンズや眼鏡処方、遮蔽訓練の指導、教育相談などできる限りのサポートを行っております。
網膜芽細胞腫については眼球摘出は対応可能ですが、現在は片眼の場合もまずは温存を目指すことが多く、名古屋医療センターと連携して治療にあたります。
関連病院とも積極的に情報共有を行い、長期にわたる治療を継続しながら個々の児の状況を総合的に判断し、最適な治療時期、治療の選択とご家族へのサポートができるよう最新の知見に基づいた診療を行っています。

神経眼科

2021年4月より神経眼科外来を新設しました。
神経眼科外来では、視覚に影響を及ぼす神経系の病変を幅広く扱います。具体的には視神経脊髄炎や多発性硬化症、遺伝性や虚血性、ウイルス性、脳腫瘍の圧迫等による視神経症などの他に、重症筋無力症など多岐にわたります。中でも、ステロイドパルスで改善が得られない難治性の視神経炎に対しては、他科と連携し免疫グロブリン大量静注療法や血漿交換等も積極的に行っております。また、近年視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防薬として抗体製剤が開発され、当院でも神経内科主導で導入が始まっております。今後も最新の検査法・治療法も積極的に取り入れ、大学病院の強みを生かして他科と密に連携を図り、治療成績の向上に努めて参ります。

神経眼科疾患の患者さんをご紹介いただく際は、金曜日(偶数週)の初診予約をお取りください。治療を急ぎの場合の他の曜日では、初診担当医が診察後に必要に応じて神経眼科外来の予約をお取りします。

斜視

名古屋大学医学部附属病院眼科の斜視外来では、小児から成人に至るまでの斜視診療に加え、小児の弱視や内反、眼瞼下垂等も対象として診療を行っております。現在は高井、岩田、岩瀬、安田の4名で毎週木曜日に外来を担当しております。成人斜視に対するプリズム眼鏡処方や局所麻酔下での手術だけでなく、乳児内斜視に対する早期の斜視手術等、全身麻酔下での手術治療にも対応しており、数多くの斜視手術を行っております。また、小児弱視患者に対しては眼鏡処方や健眼遮蔽訓練等の指導を行ったり、他科と連携し甲状腺眼症のステロイドパルスや放射線治療といった入院加療も行っております。
斜視で手術を希望される患者様や複視にお困りの患者様、弱視治療が必要な患者様等いらっしゃいましたら、木曜日の斜視外来へご紹介ください。今後とも皆様のご支援賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。