Peter A.Campochiaro先生 講演会

2014年1月31日(金)にDr. Campochiaro (The Wilmer Eye Institute、The Johns Hopkins University School of Medicine、Baltimore,MD)の網膜色素変性症(以下RP)についての特別講演「Oxidative Damage and Cone Cell Death in Retinitis Pigmentosa」が名古屋大学鶴舞キャンパスにて行われました。

博士のもとへ留学され研鑽を積んだ先生が当医局に何人もいらっしゃるご縁で、日本にいながらにして世界の一流の研究者であるDr. Campochiaroにお話しいただく機会を得ました。この日のために体調をととのえ患者さん達の平和を祈り、そのおかげか、当日は外来が長引くこともなく定時で仕事をあがり大学へと向かいました。道中、予想外の渋滞に巻き込まれたものの19時の講演開始に無事に間に合いました。

Dr. Campochiaroは丁寧に優しく、時にダイナミックにお話しくださいました。RPでは桿体細胞(rod)が広範に死滅したのちに、錐体細胞(cone)が減少を始め視力低下が生じ失明に至ります。実際にRP患者の視力の質(QOV)を著しく悪化させるのはconeの減少です。Dr CampochiaroはRPにおいてconeの死滅するメカニズムにご興味をもたれ長年研究を続けてこられました。酸素消費量の多いrodが死滅したのちに網膜における酸素レベルが上昇し、酸素傷害によりconeが死滅していくことを示した実験などにつきお話ししていただきましたが、数々のお話の中で興味を一番かきたてられたのは実際に酸素傷害からconeを保護する手段についてです。外因性、内因性それぞれ違うアプローチにて酸素保護を達成しようという取り組みにつきご説明いただきました。

RPは難病であり治療法がありません。いろいろな取り組みが昨今報じられていますが、その中で酸素毒性に注目したものを聞いたことがありませんでしたので、とても新鮮でした。酸素という、この地球ではありふれたものが、網膜レベルでも確かに大事なバランスを必要としており、網膜色素変性症において実際にQOVの低下をもたらしうることを示されたDr. Campochiaroの慧眼に驚きました。

ご講演終了後には質疑応答があり、どの質問にも丁寧にかつ真摯な眼差しで応答されるDr. Campochiaroの柔和であたたかな表情がとても印象的でした。このような機会を得ることができましたのも医局の先輩方が日本においてのみならず留学先においてもDr. Campochiaroにoutstandingと評される研究を続けてこられたからであり、恵まれた環境に感謝致します。ありがとうございました。

cuex_post_907_1
質疑応答では、医局員の質問に一つ一つ丁寧にお答えいただき、真摯な人柄が出ていました。

cuex_post_907_2
講演会後の集合写真

cuex_post_907_3
Dr. Campochiaro教室に留学した当教室の先生との集合写真。
左から上野先生、加地先生、一番右は岩瀬先生。この後の懇親会でも昔話に花が咲きました。