現在初期研修医の方々において眼科を第一志望に考えている人は少ないのではないでしょうか。私も初期臨床研修医時代はジェネラリストに興味があり、ただマイナー科という印象のみであった眼科への関心はそれほどでもありませんでした。眼科医を志した実際の理由は家族が眼科医であり、強く勧められたことが最も大きなものです。
そういったジェネラリスト志向の目から見ると小さな器官を対象とする眼科の世界は狭い印象を受けていました。しかし、眼科医として半年が過ぎた現在では、入り口は狭くてもその奥にはまるで深海のように深い世界が広がっていたことに驚きを覚え、ただただこの分野を学ぶことに没頭する毎日です。
現在私は眼科医1年目(名大ではフレッシュといいます)として診療の手伝い、手術室での外回りや機械出しなどをしています。手術に関しては、術中の外回りや機械出し・助手など通して術者の方がどれほど多くのことに注意を払って手術をしているのかがうかがえます。世間では心臓外科医や脳外科医が神の手ともてはやされ、それに対し白内障の手術はたかだか10分程度などと言われていますが、たとえ10分であったとしても、その時間にどれほど多くのことが要求されているのか、そういった意味では眼科手術は最も密度の高い手術を行っているのではないかと感じています。学生・研修医の時代は外科系の派手な手術にあこがれた時もありましたが、現在は眼科の手術の崇高さに心を奪われる毎日です。
私は入局と同時に大学院に入学し、研究についてもご指導いただいています。1年目から研究のことを考えるのは無理があるのではないか、と最初は戸惑いがありました。しかし研究的な側面は臨床的な疑問の中で生まれ、また研究をすることでより臨床にも興味が湧く、といったよい循環を果たしていると感じています。
先日、東海緑内障の会において初めての学会発表をしてきました。内容としては最近流行のOCT画像の検討に関してのものでした。準備は1か月半ほど前から始めました。1か月間はデータの収集やその処理に時間を要し、寝る時間を削って作業をする毎日でした。集めたデータをもとに指導医の先生とディスカッションをし、またデータの収集をするという繰り返しでしたが、発表を終えた後には大きな達成感があり、大変良い経験ができたと感じています。またこれからの研究の出発点になればと思っています。
昨今、研究・臨床の面でもっぱら話題になっているiPS細胞の臨床応用は他の分野に先駆け眼科が最も早いと言われています。また角膜移植は移植医療の先駆的な立場にあり、現在でも研究が進められている分野であります。その他、マイクロサージャリーなど、眼科には、医療全体のなかでも多くの先進的な分野が認められます。
これから眼科への入局を考えている学生・初期臨床研修医の先生方、ぜひ私たちと一緒に眼科の高い専門性に触れませんか。共に働くことができることを待ち望んでいます。
八雲町の町民健診
今年も八雲町健診に行ってまいりました。
北海道の八雲町では毎年名古屋大学が中心となり町民健診を行っています。眼科からも数人の医局員、視能訓練士とともに日々の診療業務を抜け出して(?)参加しました。多くの町民の方々が健診に来られ、屈折検査、視力検査、眼圧測定、眼底写真、OCTなどの検査を行いました。健診の合間には八雲町の名産を使った料理を振る舞っていただき、健康推進係の方々に観光に連れて行っていただきました。