片岡恵子先生 留学便り No.4

留学を振り返って

 3年にわたるボストンでの研究留学もついに終わりがやって来ました。とりあえず2年は逃げ出さずに頑張ろうと一念発起してやってきたこのボストンもラボの生活も、今ではすっかり自分のホームの様な愛着のある場所へと変わっています。この留学で自分が目標としていたことは、研究を自分で試行錯誤しながらも一から組み立て論文という形に仕上げることというものでした。先日ついに論文がアクセプトされたという返事を受け取ることができ、ボスや一緒に戦ってくれた仲間と喜びを分かち合うと同時に心からほっとしています。ただ、振り返ってみると自分の研究成果を論文という形で世に発表するということはもちろん最重要課題の一つではありましたが、研究の世界を肌で感じることができたことや一流の研究者の方々とディスカッションする機会を得られたこと、そして 人と人とのネットワークがいかに重要であるかを、身を以て体験することができたことこそがこの3年間の大きな収穫だったと思っています。
 ボストンはハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学やタフツ大学を始め多くの大学、研究施設が集まっています。そのため、日本人研究者も多く、日本人眼科医だけでも常に10人程度はこのボストンエリアで研究をしています。毎月第2木曜日はMassachusetts Eye Club (略してMEC)と称し、皆で集まり親睦を深めています。やはり同じ眼科医同士ですので、ひょんな会話からよいアドバイスを頂けたり、新しいプロジェクトに発展したりと今やボストン留学には欠かせない重要な会となっています。それ以外にも、“日本人研究者交流会”だとか“名古屋の会”だとかマラソンやテニスなどスポーツをする仲間だとか色々な日本人コミュニティーが存在し、そこで出会った友人たちの暖かい支えがあったからこそ3年間無事に乗り切れたと思っています。
 一方で、長い間臨床の現場から離れたことで医師としての自分のあり方、自分の目指す医療とは一体何なのかを考えるようになりました。毎日の診療に追われ考えるということをしてこなかった自分を反省するとともに、帰国後また新たな気持ちで臨床に関われることを嬉しく思っています。
 上手くコミュニケーションがとれず歯がゆい思いをしたり、頑張っても結果がついてこない現実に絶望してみたり、そんな苦しい時間もありましたがそれでも留学してよかったと、留学しなければわからなかったと思っています。
 最後になりましたが、この留学に際し教授の寺崎先生を始め多くの先生にご指導、ご助言をいただきましたこと、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

1259_1
Angio Labの仲間達

1259_2
毎月恒例MECの会

1259_3
ハーバード及びMEEIでの研究修了証をいただけました。