ASIA-ARVO 2013 in New Delhi

遡るとそれは一通のメールから始まりました。「アジアの学会があるんだけど、先生発表してみない?ちょっと話してもらうだけでいいから。」私が研究をしている補償光学(AO)の分野で活躍している日本医科大学千葉北総病院の後町清子先生からの学会参加のお誘いでした。
私   「どこの学会ですか?」
後町先生「インドなんだけれど…」
私   「…インド…ですか?…ちなみにいつですか?」
後町先生「10月の終わりで、臨床眼科学会のほんとに直前なの…(この時点で9月上旬)」
私   「僕…臨眼の初日の朝から発表が…。」
後町先生「先生が嫌なら断ってもらっていいよ?そしたら私も座長断っちゃおうかな?」
私   「…。…行きます。」
実際こんなやり取りだったかははっきり覚えていませんが、こんなやり取りの末行くことが決まりました。
Asia-ARVOの存在は知っていましたが、まさか自分が行くことになるとは思っていなかったので急いで情報をかき集めました。行くにはビザがいるが発行に時間がかかること(この時点ですでにぎりぎりで不備があるともう間に合わない)、行った人はだいたい下痢をしていること(歯磨きの水もミネラルウォーターor煮沸した水を使わないと危ない)、英語が独特のなまりがあること(そもそも自分の英語が不安)…不安しか増えませんでした。ただ、行くと決めた以上は頑張ろうと粛々と準備をしました。
ひと月を切った頃に、追い打ちをかけるように後町先生とAOのセッションの座長をされるSupriya先生から「2-3分じゃなくて、やっぱり10分くらいでお願いします。」
約束と違うじゃないか!と思いましたが、もちろん「大丈夫です。」とお答えしました。

そんなこんなでばたばた準備をしているうちにあっという間に出国。インドへ出発しました。現地の空港で後町先生と合流したものの、ホテルとの連絡がうまくいっておらず、迎えが来ず、タクシーを拾ってホテルへ向かいました。カルチャーショックでした。常にクラクションを鳴らしながら、4車線の道路を平気で6台が並走し、トラックとトラックの間のわずかな隙間に車体をこじ入れ疾走するタクシーの中、私達にできることは頬をひきつらせながら祈ることだけでした。ホテルまでの15分はとても長く感じました。真夜中の到着で緊張と疲れもあり、その夜はあっという間に寝入ってしまいました。

前日入りで時間があったので、翌日は後町先生のつてで、在印日本大使館の医務官金武先生ご夫妻に大使館とデリーを案内していただきました。忙しい中、わざわざ時間作っていただき、金武先生から医務官のお仕事についてお話を伺うことができました。 インドはある程度医療が発達しているので、大使館の職員とその家族の基本的な診療・緊急時のfirst touchをすることや予防接種をすることが主な仕事とのことで、その日も職員のお子さんの一人が集団食中毒に巻き込まれたことへの対応をされていました。ちなみにこの日は前日のタクシーの運転とは打って変わり、大使館付きの運転手さんの安全で、死の危険を感じることのない安心の運転で市内を案内していただきました。
インドは最近中国のようにPM2.5による大気汚染があり、朝から霧がかかったようで遠くはかすんで見える状態でした。西洋資本の豪華なホテルの並ぶ一方で、大通りにも関わらず車に寄ってくるたくさんの乞食がおり、言い古された言葉ですがまさに「発展の光と影」を肌で感じました。
その日ホテルに帰ると朝まではなかった学会の看板が掲げられ、ホテル全体が一気に学会モードに切り替わっていました。

学会が始まると、一気にホテルが喧騒に包まれました。人、人、人。ほとんどはインドの方でしたがちらほらとアジア系、ヨーロッパ系の参加者がおり、日本の学会とは違う雰囲気にどんどん発表への不安が強くなってしまいました。このまま雰囲気に呑まれてはいけない!と発表を聞いて回ると、プレゼンと英語の上手さにさらに不安が募っていきました。このとき見ていて気づいたことの一つに、インドの眼科医は女性が非常に多いということがあります。男性より多いくらいで、他の科のことはわかりませんが、少なくとも眼科においては女性の進出が著しいようでした。その晩は発表の打ち合わせを後町先生としてスライドの手直しをした後、部屋にこもって発表の練習をしていると、時間をかなり超過してしまうことが発覚!急いで修正をしながら練習をしているうちに力尽きて寝ていました。

いよいよ発表当日。なんとかスライドも完成し、練習を重ねて発表に臨みました。一瞬真っ白になったものの、なんとか立て直し、無事に初の英語の発表を終えることができました。日本の学会と違い、議論が白熱すると次の口演はそっちのけで議論を続けるというタフな環境でしたが、後町先生やニコラさん(AO機器を作成しているImagine eyes社の社長)の助けもあり乗り切ることができたのが少しだけ今後への自信になりました。この日の晩にはWelcome Partyが開催されインドの伝統的な踊り(?)を見ながらのDinner・・・でしたが帰国のため、あえなく最初だけで途中で撤退。臨眼の発表のため、帰路につきました。

あわただしい中で参加したASIA-ARVOでしたが、一番印象に残っていることは、一緒にAOのセッションで発表をしたインドの先生方とは口演が終わったあとも1時間以上会場に残って議論をしながら交流を深められたことです。とても有意義で楽しい時間で、彼女らのパワーを見ているとこのままではいけないと強く感じることができ、自分の研究へのモチベーションがより一層高まりました。

最後になりましたが、学会参加にあたり、お忙しい中、多大なご迷惑をおかけした伊藤先生、このような貴重な機会を与えてくださり、日頃よりご指導をしていただいております寺崎教授をはじめ、医局の先生方に心よりお礼申し上げます。

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スモッグの向こうに見えるインド門

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世界遺産クトゥブ・ミナールをバックに。筆者と後町先生

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色付けされた米粒で描かれたウェルカムボード

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AOのシンポジウムで発表。インドは女性眼科医が多い!

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学会主催のウェルカムパーティー。現地の踊り子さん。

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