研究内容

名古屋大学眼科学教室には、年間初診患者数3,400人、年間手術件数1,500件という非常に多くの患者さんが受診され、治療を受けられます。患者さんに最新で良質な医療を提供することが我々の最終目的です。そのためには、日夜、基礎研究、臨床研究に励んでおります。最新の機器を用いた診断や、最先端の薬物治療、手術治療は、患者さんの役にも立ち、一方でその臨床研究は、国内、海外の学会や、論文として発表されています。

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[黄斑グループのカンファランス風景]

黄斑疾患に関しては、加齢黄斑変性(AMD)を中心とした診断・治療を行っております。ここ10-15年でAMDに対する臨床アプローチはめまぐるしく変化してきましたが、その間も名古屋大学眼科では放射線療法、脈絡膜新生血管抜去術や黄斑移動術、経瞳孔温熱療法、光線力学的療法(PDT)、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体注射療法と、各時代で最先端の治療を行い、その治療成績や網膜機能の向上について研究発表してきました。

 

名古屋大学の最近の最先端の臨床研究としては、日本に広く普及してきた、網膜の微細構造を撮影する光干渉断層計(OCT)の開発における中心的役割を持つ施設であることを背景として、補償光学レーザー走査検眼鏡(Adaptive Optics:AO)を用いた研究も行っています。さらなる網膜機能の向上を目指した治療を行い、この機器で視細胞を細胞レベルで観察し、その治療の影響を評価し、その成果を発表しております。

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[補償光学レーザー走査検眼鏡で撮影した正常者の眼底像:左下は視細胞の配列、右下は視細胞密度の分布を表す。]
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[外来の各種OCT検査機器]


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[アブダビでの国際学会発表]

名古屋大学眼科の主な研究テーマの一つとして、先代の三宅養三名誉教授以降、発展してきた網膜電図があります。視力に直接影響する黄斑部の機能を検査する黄斑部局所網膜電図(Focal macular ERG)や、黄斑部の細分化した部位の機能を同時に検査する多局所網膜電図(Multifocal ERG)、杆体・錐体機能を分けて検査できる国際標準のISCEV ERGなど、さまざまな網膜電図の記録装置を保有しており、原因不明の視力障害や、難治な遺伝性疾患を解析するとともに、分子生物学や画像診断など多方面の解析を組み合わせて行うことで、当教室でなければできない高度な研究成果を発表しております。

 

 

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[眼分子生物研究会in登別]

網膜静脈閉塞症(Retinal Vein Occlusion: RVO)は、糖尿病網膜症に次いで頻度の高い網膜血管障害であり、網膜虚血により黄斑浮腫や血管新生緑内障を引き起こして、高頻度に視覚障害を伴います。RVOの発症機序は完全には解明されていませんが、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などによる動脈硬化が大きな要因と考えられています。動脈硬化が主原因となるRVOは今後も患者が増加すると考えられ、視機能低下の原因として重要な疾患であります。

近年、RVOにおいては、網膜循環障害に伴う網膜虚血が眼内の血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)産生を増加させ、黄斑浮腫や血管新生緑内障の一因となることが明らかとなり、抗VEGF治療が分子標的治療の主流となっています。以前は抗がん剤であるベバシズマブの適応外投与が行われていたが、本邦でもラニビズマブおよびアフリベルセプトが承認され、一般臨床で広く用いられています。

我々のグループはこれまでに、多数例のRVO眼の抗VEGF治療を行い、その治療効果や、治療後の網膜循環、網膜形態について解析を行ってきました(Retina 2009、Retina 2011、Retina 2011)。

また、網膜電図(ERG)や、眼内VEGF濃度測定といったアプローチからRVO眼において非侵襲的に網膜虚血の程度を予測する手法(IOVS.2011、JJO.2014、PlosOne.2015)について報告を行ってきました。さらに、皮膚電極小型ERG記録装置(RETevalTM)を国内施設で先駆けて導入し、CRVO眼におけるラニビズマブ注射後の網膜機能の回復について報告しています。(Acta Ophthalmol.2015)。

RVOの治療においては、抗VEGF治療の普及に伴い、新たなエビデンスも加えられ、治療に対するは考え方が大きく変わってきましたたが、統一された治療法が確立されていないのが現状であります。

我々は今後もRVOの病態解明をすすめ、RVO治療の発展に寄与することを目指しています。

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以上のように、名古屋大学眼科では、数多くの臨床的・基礎的な、先を見据えた研究を行っております。